RME 開発者ストーリー - Synthax Japan Inc. [シンタックスジャパン]
RME Developer Story | Matthias Carstens
Matthias Carstens Interview 2012

放送、スタジオ、ライブ、研究施設など、世界中のプロフェッショナルの現場から高く評価されるRMEの製品を手掛けるのは、5人の開発者たち。たとえ技術的に困難であっても、自分たちが使いたい製品を作るポリシーを貫き、革新的な技術と性能、音質、コストパフォーマンスに優れた製品を実現している。

2010年12月にリリースされたRMEオーディオ・インターフェイス・シリーズのフラッグシップ「Fireface UFX」は、『楽器のグラミー賞』と讃えられるMIPA 2011アワードに輝き名実共に時代を代表するオーディオ・ツールとなった。

RMEの歴史、技術背景、そして将来像を、創業メンバーであり開発者の1人でもあるマティアス・カーステンズが語る。


4人の開発者と2つのプロダクトからスタートしたRME

私は、楽器店で電子系の技術者として、あらゆる製品の修理を担当していました。それと同時に、ドイツのエレクトロニクス系の雑誌にライターとして寄稿もしていました。当時から必要に迫られてPCB(プリント基板)を造ったり回路図を描いたりしていました。また、私は2つのバンドでドラムを演奏するミュージシャンでもありました。

そんな中、雑誌の記事を通じて旧東ドイツにいたもう一人のRME創業者であるラルフ・マンネル(Ralf Mannel)と知り合いました。彼は、Windowsソフトウェア上でデジタル・オーディオ信号をモニタリングするための、小さなデバイスに関する記事を寄稿していました。当時としては珍しくチャンネル・ステータスのデータにも対応するなど、データ・ビューアとして高価な計測機器にも匹敵する画期的な製品でした。私はそれを見て「すばらしいデバイスだ!量産して販売しよう」と彼に持ちかけました。価格も高くないし、多くの人がきっと欲しがるだろうと思ったのです。

そこで私は、旧東ドイツにあるIMMという会社に出向いて単刀直入に「素晴らしいデバイスがあるので、作ってもらえないか?」と依頼しました。彼らは「製造費用はどれくらい用意されていますか?」と聞いてきましたが、製造するのにお金がかかるという発想がなかったので「一銭もないです」と正直に答えたところ、「いいでしょう、作りましょう」と言ってくれました。今思えばクレージーな話ですが(笑)。彼らは作ってくれました。

同時期に、やはり雑誌を通じてコンピュータ用のレコーディング・カードを作っていた、マーティン・カースト(Martin Kirst)とウベ・カースト(Uwe Kirst)の兄弟と知り合い、当時はまだ珍しかったPCIオーディオ・カードの販売をはじめました。それから1〜2年してからステファン・フロック(Stephan Flock)と出会い、8チャンネルAD/DAコンバータ「ADI-8 Pro」をリリースするに至りました。後に彼はMADIやPremium Lineの各製品の基礎を作り上げ、現在に至っています。

 

 

そうした経緯で、4人の開発者と2つのプロダクトからRMEがはじまりました。といっても、現在も開発者が1人増えたくらいで、そんなに変わってないですけどね(笑)。RME自体は未だに開発者同士の小さなグループで、私も含め皆が自宅で勤務しているため、私たちには事務所もありません。一方で、製造を引き受けてもらっているIMMは当時10人程度だったのが、130人を超え、ディストリビュータのSynthaxはワールドワイドに業務を展開しています。それぞれの会社がいい形でバランスを取っており、とてもフレキシブルで迅速な対応がとれる体制が築けています。

(右上段へ続く)

 

RMEの技術のすべてを1ユニットに搭載したFireface UFX

会社を立ち上げるきっかけとなったDAM-1の売上は惨憺たる結果でしたけど、その技術は現在のDIGICheckの開発に活かされています。PCIオーディオ・カードは当初からよく売れました。そこから発展した次世代のカードが、私たちの最初のブレークスルーとなり、RMEの代名詞となったHammerfallシリーズです。3つのADATポートを持ち、他のどのオーディオ・カードよりも速い動作と低いレイテンシーを実現した素晴らしい製品です。それからしばらくして出てきたADI-648も、8つのADATポートとMADIを双方向に変換する、私たちにとってはじめてのMADIデバイスで印象に残っています。

 

2000年頃にSteinbergが彼らのソフトウェア「Cubase」に私たちのハードウェアをバンドルして完璧なソリューションとして提供しはじめたのも私たちにはとてもラッキーでした。彼らは、私たちの製品が、パフォーマンスが優れているだけでなくASIOダイレクト・モニタリングにも対応していることを把握していたので、私たちを選んでくれました。

次に重要な製品といえば、初めてFireWireに対応したFireface 800、そして初めてUSBでもプロフェッショナル・オーディオでの使用に耐えうる製品となったFireface UCでしょうか。

もちろん、現在お勧めなのは私たちの技術のすべてを1つのユニットに搭載したFireface UFXです。

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